研究課題
動脈硬化は「血管への傷害」を契機に発症すると考えられている。近年、様々な分化能を有する組織幹細胞が成体においても残存しており、遠隔臓器の修復や再生に関与することが明らかになった。そこで、動脈硬化の発症と進展における血中前駆細胞の関与を検討すると同時に、脂肪細胞の起源と脂肪前駆細胞の同定とその機能解析を試みた。マーカー発現マウスを用いた骨髄移植実験と各種の血管病モデルを用いて、骨髄細胞が血管前駆細胞として血中に動員され平滑筋細胞もしくは内皮細胞へ分化し、傷害後血管の修復と病変形成へ寄与する機序が示唆された。また、骨髄由来前駆細胞は、高度に進行した血管のリモデリングにも関与していると思われた。「血管前駆細胞」の定着や分化に関する研究は、血管病の新しい治療法、血管再生、創薬に貢献すると期待された。我々は、以上の結果より、「血管平滑筋細胞のように血中には脂肪細胞の前駆細胞が存在するのではないか」という仮説をもち、骨髄置換やParabiosis手術を用いて、血中の細胞が果たして脂肪組織の形成に関与するのかどうかを検討している。骨髄置換マウスの解析では、2004年に他のグループから報告されたとおり、多くの骨髄由来細胞が脂肪組織で認められた。現在、その細胞の形質を免疫染色、免疫電子顕微鏡で検討している。また、末梢血中の単核球をフィブロネクチンでコートした皿で培養すると定着し間葉系様細胞の形を呈するようになった。この細胞を脂肪様細胞に効率良く分化誘導する培養条件を現在、詳細に検討中である。また、各種の細胞表面マーカーを用いて細胞をソートし、脂肪細胞への分化能を有する分画の同定を試みている。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
J.Mol.Cell.Cardiol 36巻・4号
ページ: 459-463
Hypertension 43巻・6号
ページ: 1214-1220
Arterioscler Thromb Vasc Biol. 24巻・7号
ページ: 1147-1149
Biochem Biophys Res Commun 320巻・2号
ページ: 372-375
Arterioscler Thromb Vasc Biol. 24巻・10号
ページ: 1886-1890
Cardiovasc Pathol. 13巻・6号
ページ: 306-312