研究概要 |
動脈硬化の進展と破綻における血中前駆細胞の関与を検討すると同時に、脂肪細胞の起源と脂肪前駆細胞の同定ならびにその機能解析を試みた。また、「プラーク破綻」の過程における脂肪組織の役割に関して検討した。 (1)若齢もしくは高齢ApoE欠損マウスに対する骨髄移植を行い、動脈硬化の発症と進展における血中前駆細胞の関与を検討した。骨髄細胞が血管前駆細胞として血中に動員され平滑筋細胞もしくは内皮細胞へ分化し動脈硬化病変に取り込まれていた。骨髄由来前駆細胞は、MMP-9を高発現しコラーゲンの産生能が低下していた。 (2)アンジオテンシンIIは外膜における血管新生、骨髄前駆細胞の動員を促進し、プラークの形成を促進した。アンジオテンシン1型受容体欠損マウスにおいては、血中前駆細胞数が減少しており、病変形成が抑制されていた。野性型マウスからの骨髄移植によって、アンジオテンシン1型受容体欠損マウスの動脈硬化は促進された。 (3)マウス大腿動脈に対するワイヤーを用いた拡張傷害後、血管周囲脂肪組織におけるアディポネクチン発現が低下し、MCP-1, PAI-1, IL-6の発現が亢進し、炎症細胞浸潤が認められた。Merox樹脂灌流後の走査電子顕微鏡写真では、血管周囲脂肪組織には非常に濃密な血管叢が存在し、外膜を貫通してプラーク内と交通している所見が観察された。 骨髄細胞が血管前駆細胞として血中に動員され平滑筋細胞もしくは内皮細胞へ分化し、傷害後血管の修復と病変形成へ寄与する機序が示唆された。また、骨髄由来前駆細胞は、高度に進行した血管のリモデリングにも関与していると思われる。このような動脈硬化の進展と破綻の過程において脂肪組織は重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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