研究概要 |
脂肪細胞内の脂肪滴表面には、ある種のタンパク質が局在しており、脂肪滴形成に寄与していることが予想されている。この中で、perilipinは脂肪細胞に特異的に発現するタンパク質で、これをノックアウトしたマウスは高脂肪食で飼育しても肥満になりにくいことが知られている。我々は、脂肪細胞特異的なperilipin遺伝子の発現機構を解析し、PPARγ2がその遺伝子発現を主に制御することを明らかにした(Arimuraら、J.Biol.Chem.279,10070-10076,2004)。Perilipinの機能をさらに明らかにする目的で、我々はperilipin発現NIH-3T3細胞株を樹立した。オレイン酸を添加した培地で培養すると、perilipin発現細胞は細胞内に脂肪滴を形成したのに対し、野生型細胞では脂肪滴形成は散見されるのみであった。脂肪滴は一層の脂質膜で覆われており、この脂質膜の起源は小胞体であると言われている。そこでオレイン酸添加培地で脂肪滴形成が亢進した際に、小胞体膜のコレステロール含量の変化を追跡した。その結果、脂肪滴形成に伴い小胞体のコレステロール含量は低下しており、小胞体外膜が脂肪滴形成に動員された結果と推察された。実際、この条件下で転写因子SREBP(Sterol Regulatory Element-binding Protein)の切断は、小胞体コレステロール低下に伴い亢進しており、脂肪滴形成が小胞体膜環境を変化させ、SREBPの活性化を導くことが推察された。同時に我々は、siRNA法を用いてperilipinノックダウン3T3-L1細胞株を樹立した。本細胞株は、分化誘導培地で培養してもperilipin発現は検出されず、脂肪滴形成も認められなかった。この状況下では、PPARγの発現誘導も検出されず、分化そのものが進行していなかった。以上の知見は、脂肪滴形成がSREBPの活性化等を介して脂肪細胞分化を促進していることを意味しており、perilipinの脂肪滴形成機能は脂肪細胞分化に必須な役割を果たすことが明らかになった。
|