研究概要 |
IL-1,TNF-α,IL-6のような炎症性サイトカインは、炎症のメディエーターとして知られていると同時に、神経・免疫・内分泌系に対して様々な作用を及ぼすことが知られている。最近のWeisbergらの研究から、肥満が慢性、弱い炎症を伴っており、肥満の脂肪組織にマクロファージの浸潤が起こっていることが報告されている。また、Meier, C.Aらの研究から、IL-1 receptorアンタゴニスト(IL-1Ra)の血中レベルが、肥満患者で上昇しており、IL-1Ra遺伝子が、脂肪組織において発現していることが示されているので、IL-1Raは、肥満や代謝を制御するアディポサイトカインのひとつであると捉えることが出来る。我々は、IL-1Ra欠損マウスが痩せており、血中インスリンレベルが低下していることを報告した。本研究において、我々は、IL-1Ra欠損マウスとIL-1α/β欠損マウスを用いて、IL-1システムの肥満、代謝における役割を検討する。 本年度は、IL-1Ra欠損マウスにおけるIL-1の過剰シグナルが痩せを引き起こすサイトカインネットワークを解析した。他のグループの研究から、IL-6欠損マウスが肥満を引き起こすことが報告されており、IL-1は、血球においてIL-6を強く誘導することが報告されているので、IL-1とIL-6の関係、IL-1の体重制御及びグルコース代謝における役割が、IL-1の下流でIL-6が関与している可能性を検討した。そのために、IL-6、IL-1Raダブル欠損マウスを作成した。IL-6/IL-1Raダブル欠損マウスは、IL-6欠損マウスと比べて有意に痩せており、白色脂肪組織が減少していた。インスリン感受性が良くなっており、血中インスリンレベルが低下していた。これらの結果から、IL-1Ra欠損マウスで見られる痩せは、IL-6に依存しないことが明らかになった。 また、防衛大学の大鈴らと共に、IL-1Ra欠損マウスを用いて、IL-1/IL-1Ra系のコレステロール代謝における役割を検討し、IL-1Raが欠損すると動脈硬化食負荷によるコレステロール代謝が悪化することを明らかにした。
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