研究概要 |
3T3-L1細胞を定法により分化誘導し、細胞内の脂肪蓄積が十分になるまで培養を続けた。この間2日ごとに培養(コンディション)培地を回収した。集めた培地より遠心分離を組み合わせて(粗)膜小胞画分を得た。特異抗体を用いたウエスタンブロット解析により、元々乳脂肪球皮膜の主要タンパク質として同定されていたMFG-E8が脂肪細胞から分泌された膜小胞上に比較的多量存在することが明らかとなった。これに加え、膜タンパク質カベオリン、c-Srcもまた局在することが判明した。これらのタンパク質は細胞内と同じトポロジーで膜小胞に局在することも併せて明らかとなった。これらに加え、脂肪細胞特異的に合成、分泌されるレプチンもまた膜小胞上に存在することが明らかとなった。他の微量タンパク質成分に関しては現在質量分析装置を用いて同定を進めている。 さらに超遠心分離後の沈殿(粗膜小胞)をショ糖密度勾配(10-70%)遠心分離法により細分画し、ウエスタンブロット解析を行ったところ、MFG-E8,カベオリン、c-Srcいずれも1.13〜1.20g/mlの密度を持つ膜小胞上に存在することが明らかとなった。これらの密度は樹状細胞やB細胞から分泌されるエキソソームと呼ばれる膜小胞の一種のものとほぼ一致することから、3T3-L1脂肪細胞由来の膜小胞も多小胞体(multivesicular body)を経由して分泌されることが示唆される。 また集めた膜小胞を透過型電子顕微鏡により観察したところ、直径100nm付近を中心に大きさの異なる膜小胞がはっきりと観察された。現在同定されたタンパク質が膜小胞の何処に、どのような形で存在しているのかに注目し、免疫電子顕微鏡観察の準備を進めている。
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