研究概要 |
アディポネクチンの会合状態は、その生理的な機能に重要であることが知られている。そこで我々はアデイポネクチン分子のN末端側に存在する(X-Y-Gly)_nの繰り返し配列を持徴とするコラーゲン様ドメインに注目しその構造、会合状態に関する研究を行った。まず大腸菌を用いたアディポネクチン、及びそのドメインの大量発現・精製系を構築し、得られたアディポネクチン分子についてその物性評価をおこなった。円偏光2色性スペクトル測定の結果、アディポネクチンN末端側のコラーゲン様ドメインは、αヘリックス、βシート等の2次構造は示さないことが示されたが、一方で222nmにおけるCD値からは、温度依存的な構造転移の存在が示唆された。また、コラーゲン様構造の基礎的研究として、コラーゲンモデルペプチド(X-Y-Gly)_<10>を用い、水酸基をもつHypのほか、水酸基を電気陰性度の最も高いフッ素原子に置換したフルオロプロリンを含むモデルペプチドを合成して示差走査熱量計DSCによる熱測定を行い、ヒドロキシプロリン,フルオロプロリンともにトリプルヘリックス構造の熱安定性を上昇させる働きはあるものの、安定化機構は大きく異なっており、前者はエンタルピー的,後者はエントロピー的な効果によって安定化されていることを示した。またこれらの安定化機構が、モデルペプチドの部分モル体積と露出表面積(ASA)から推定されるモデルペプチドと水分子との相互作用によってよく説明されることを明らかとした。これらの基礎的検討により、変異体を用いたシステマティックな物理化学的研究が、コラーゲン様構造の安定性解析に有効であることが示された。
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