脂肪細胞より分泌され、脂肪細胞の増殖及び分化の引き金となるパラクライン因子を同定し、その細胞内シグナル伝達機構を解明するために、株化脂肪細胞でのみ認められる分泌蛋白のプレテオーム解析を実施した。株化細胞である3T3-L1脂肪細胞の培養上清を用いた2次元電気泳動にて約2500個の分泌蛋白が確認されたが、前駆脂肪細胞より優位に増加した分泌蛋白は約300から400個存在した。この分泌増加した蛋白のうちで、約100個の蛋白を質量分析にて同定したが、アディポネクチンやMIF(macrophage migration inhibitory factor)などの既存のアディポサイトカイン以外に、新規の増殖因子・アディポサイトカインの同定には至らなかった。 そのため培養3T3-L1脂肪細胞を約30日間培養することで肥大化を誘導した。この過程で細胞の体積が約8倍増大し、生体内に存在する脂肪細胞と同等の大きさの細胞が作成可能となった。この肥大化3T3-L1脂肪細胞の培養上清を2次元電気泳動に供し、脂肪細胞でのみ認められる分泌蛋白のプレテオーム解析を実施した。培養3T3-L1脂肪細胞から分泌が確認された約2500の蛋白のうち細胞の肥大化によって分泌が誘導された蛋白が約150個確認された。質量分析の結果、この150個の肥大化にて分泌が誘導される蛋白の中にはレジスチン、アポリポプロテインやCcl2、Ccl7、Ccl9、Cxcl12などのケモカインが確認されたのみならず、脂肪細胞での発現・分泌が報告されていない新規なインターロイキンやカテプシン、マトリックスメタロプロテナーゼが認められた。
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