研究概要 |
白色/褐色という脂肪細胞の形質決定因子は、肥満とインスリン抵抗性を同時に改善する画期的な治療薬の標的となりうる。事実、転写因子FOXC2を脂肪細胞特異的に過剰発現させたマウスにおいて、白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞様に変化し、体重減少と共にインスリン感受性が高まることが報告された(Cell 106:563,2001)。そこで本研究では、FOXC2関連脂肪細胞形質決定因子を独創的手法による体系的同定を試みた。1)FOXC2の脂筋細胞形質への効果、2)脂肪細胞形質特異的標的遺伝子の同定、3)脂肪細胞形質特異的FOXC2結合蛋白の同定について進めた。 1)野生型及び変異型のFOXC2 cDNAをレトロウイルスベクターに導入した。さらにこれらを分化前の3T3-L1細胞にトランスフェクションした。その後、脂肪細胞分化を誘導し、形質の変化を評価した。その結果、野生型FOXC2により白色脂肪細胞への分化が阻害された。変異型FOXC2では異なる応答を示した。野生型の導入によりFOXC2のmRNAの発現が増強していることを確認した。また、分化阻害が脂肪細胞分化に関わる転写因子の発現抑制を伴うことを見出した。 2)アレイに向けて野生型FOXC2導入ありとなしにおいてRNAを経時的に抽出した。 3)既に確立したイーストツーハイブリッド法を用いて、3T3-L1細胞のcDNAライブラリーをFOXC2をbaitとしてスクリーニングした結果、予想よりも早くFOXC2結合蛋白として複数の陽性クローンを得た。これらの蛋白とFOXC2の相互作用をGST-pull downによりin vitroで確認した。さらに、GAL4結合配列とE1b TATA boxを有するluciferaseレポーターとGAL4DNA結合領域にFOXC2を融合させた蛋白の発現ベクター、ならびに同定した蛋白の発現ベクターを構築した。これらを同時にトランスフェクシヨンし、FOXC2の転写活性化能への影響をIn vitroで解析した。
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