研究課題
本研究では、これまでに以下のような実験を行った。まず(1)脂肪細胞においてパッチクランプ法を用いた電気生理学的解析方法を確立し、(2)低浸透圧刺激によって脂肪細胞においてもVSORが存在し、他の細胞におけるVSORと同様の電気生理学的特徴を有していた。また低浸透圧条件下で、細胞容積の測定により脂肪細胞は調節性細胞容積減少(RVD)を示した。さらに(3)脂肪細胞においてTNF-α添加によりVSORが活性化されること、そのTNF-αによるVSOR活性化の際に細胞容積の減少を伴うことを明らかにした。次にTNF-αが細胞容積の減少を引き起こす条件下でのグルコース取込を検討したところ、(4)VSORブロッカーであるグリベンクラミドおよびNPPBが、TNF-αによるインスリン依存的グルコース取込の阻害に対して抑制的に作用する、すなわちVSORブロッカーがインスリン感受性を回復させる作用を持つことを示した。さらにグルコース取込という脂肪細胞の機能とVSOR活性化を介した細胞容積制御機構との関係をより明確にするため、細胞容積の増大が引き起こされる低浸透圧刺激によるグルコース取込の変化を検討したところ、(5)脂肪細胞では、低浸透圧刺激による細胞膨張がグルコースの取込を上昇させた。さらにVSORブロッカーの添加によってRVDを抑制し、細胞膨張を持続させると、そのグルコース取込上昇はさらに促進された。このことは、脂肪細胞では何らかのメカニズムを介して、細胞容積の増大がグルコース取込と密接な関連があること、およびTNF-α作用によるVSOR活性化を介した細胞容積変化はインスリン抵抗性の発症に寄与しうることが強く示唆された。
すべて 2005
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Biochem.Biophysic.Res.Commun. 337
ページ: 440-445