研究課題
我々はこれまでに、転写因子をコードするPax6遺伝子の変異ラットでは海馬の神経新生が低下しており、またアストロサイトの形態異常が認められることを見いだしている(Maekawa et al.,2005)。一方、行動学的解析により、Pax6変異ラットでは社会性の異常などが認められており、このラットは生後神経新生やアストロサイトの形態と脳高次機能との関連を解析する上での格好のモデル動物である。そこで本年度は、生後神経新生におけるPax6の機能を詳細に解析するため、Pax6の下流制御遺伝子としてのfabp7(fatty acid binding protein)に着目し、FABP7発現細胞の性質を検討した。その結果、野生型ラット海馬では、FABP7発現細胞のほとんどがPax6を共発現しており、またPax6変異ラットではFABP7発現細胞数が減少していた。胎生期脳ではFABP7は神経上皮細胞の未分化性維持に機能していることから(Arai et al. 2005)、生後海馬においてもFABP7はPax6の標的遺伝子として神経新生の制御に関わっている可能性が考えられる。またPax6は生後大脳皮質のGFAP陽性アストロサイトにも発現が見られる。In vivo、in vitroにおいて大脳皮質アストロサイトの形態を検討した結果、野生型と比べてPax6変異ラットのアストロサイトは突起伸展率が低下していた。以上の結果から、転写因子Pax6はFABP7を介して神経幹細胞の増殖を制御し、また分化したアストログリアの形態を制御している可能性が示唆された。
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