研究概要 |
シナプスを取り巻くアストロサイトから分泌される因子(コレステロールなど)によってシナプスの形成と機能が修飾されると報告されている.我々は,シナプス後部タンパク質,ssLRP(現在LRP4として名称が確定した)をコードする完全長遺伝子をクローニングした.LRP4はLDL receptor familyのメンバーであり,シナプス後部にターゲットすると考えられた.LDL receptor familyのメンバーの機能として一般に,コレステロールの代謝,その他のリガンドの受容と取り込み,およびそれに伴う細胞内へのシグナル伝達である.我々は,LRP4がグリアからの放出因子のシナプス後部側の受容体で,グリア-シナプス相関の重要な担い手の一つでははないかと考え,LRP4について研究を行うことにした. 今年度はLRP4の基本的な性質について明らかにした.また,LRP4欠損マウスの作出に取りかかった. (1)1種の抗LRP4抗体(cytosolic C末部分をエピトープとした)を作成した.このタンパク質はCos7細胞に発現させた全長LRP4を認識したが,脳ホモジェネートおよび細胞下分画においては,全長サイズのタンパク質はごく微量で,むしろ低分子量のタンパク質を認識した. (2)LRP4C末端部にPDZ domain binding motifが存在していて.それにより,PSD scaffold proteinであるPSD-95やSAP97と結合した(pulldownやimmunoprecipitationにて証明>.またその相互作用はCaMKIIによるLRP4のリン酸化により抑制されることを証明した. (3)LRP4の内在性のグリア由来のリガンドを同定する為にLRP4のORF全長配列を組み込んだベクターを作成した、Cos7では全長LRP4タンパク質の発現が見られた、現在LRP1 nullのHEK293 cellへのstableな発現系を確立中である.これを用いてリガンドの同定を行う予定である(ワシントン大学Dr Buとの共同). (4)ノックアウトマウスの作成の為のターゲッティングベクターはほぼ完成まで近づいた.
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