研究概要 |
1.脳スライスのアストロサイトからの[Cl^-]_i測定とグリアによる神経回路機能調節の証明[窪田・福田]:まずアストロサイト親和性色素のsulforhodamine 101を用いて、海馬スライス中のastrocytesを同定した。次にパッチ電極内液にCl^-感受性蛍光色素のMEQを加えておき、同定した多数のastrocytesにsingle-cell electroporation法で次々とMEQを注入し、同時に5-6個のastrocytesでのCl^-イメージングを可能にした。シェーファー側枝をテタヌス刺激した時のastrocytesの[Cl^-]_i変化をこれら複数個のastrocytesで同時に観察した(astrocyte回路網のCl^-イメージング)。シェーファー側枝の高頻度刺激で記録したすべてのastrocyteでMEQ蛍光が低下、すなわち[Cl^-]_i上昇が見られた。これらの[Cl^-]_i上昇は刺激の頻度や強度に応じて変化した。しかしこの変化は、以前我々が報告した錐体細胞でのGABA作用を抑制性から興奮性に逆転させるCl^-蓄積(J.Neurophysiol. 2003)とは時間経過が異なり、静止電位におけるastrocyteのCl^-の電気化学勾配もニューロンと逆向きとの報告もあるので、このastrocyteでの[Cl^-]_i上昇はニューロンとは全く別のメカニズムであると考えられた。以上からastrocyte回路網による能動的なCl^- buffering機構が存在すると結論した。 2.神経障害モデルを用いたアストロサイトの[Cl^-]_i調節による神経回路機能調節の検討[福田・窪田・井上]:神経障害モデル(皮質凍結損傷)の傷害部位ではastrocyteが増殖していた。GFAP、NSEとNKCC1,KCC2との二重免疫染色とin situ hybridizationを行った結果、ニューロンではNKCC1,KCC2とも発現していたのにたいし、astrocyteではNKCC1のみが発現しており、astrocyte回路網によるCl^- buffering機構存在の仮説と矛盾しない結果であった。
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