研究課題/領域番号 |
16047214
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鍋島 俊隆 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (70076751)
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研究分担者 |
新田 淳美 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教授 (20275093)
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キーワード | NMDA受容体 / CaMK II / フェンシクリジン / アストロサイト(GFAP) / GLAST / 認知機能 / マウス |
研究概要 |
N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬のフェンシクリジン(PCP)を連続投与したマウスに認められる情動・認知機能障害におけるグルタミン酸作動性神経系およびグリア細胞に関与する分子機序を調べた。強制水泳ストレスを負荷したsaline連続投与マウスにおける前頭前皮質Ca^<2+>calmodulin kinase II(CaMKII)リン酸化蛋白の発現は、非ストレスsaline連続投与マウスのそれに比べて有意に増加していたが、強制水泳による無動状態の増強を示したPCP連続投与マウスではそのような増加は認められなかった。水探索試験のテスト試行ではsaline連続投与マウスは、訓練を受けていないマウスと比較し、飲水までの時間は有意に短縮した。PCPを連続投与したマウスの水探索時間は有意に延長し、潜在学習障害が認められた。訓練試行後のsaline連続投与マウスにおける前頭前皮質CaMKIIリン酸化蛋白は有意に増加していたが、PCP連続投与マウスでは、そのような増加は認められなかった。また、saline連続投与マウスと比べ、PCP連続投与マウスのNMDA受容体ξサブユニットのリン酸化率は低下していた。一方、PCP連続投与マウスの前頭前皮質における細胞外グルタミン酸の基礎遊離量は、saline連続投与マウスのそれに比べて有意に減少していた。アストロサイトのマーカーであるGFAPおよびグリア型グルタミン酸トランスポーターであるGLASTの発現を免疫組織学的あるいはウエスタン解析により調べたところ、PCP連続投与マウスの前頭前皮質におけるGLASTの発現量およびGFAP陽性細胞は、saline連続投与マウスのそれらに比べ有意に増加していた。以上の結果より、フェンシクリジン連続投与マウスに認められる精神行動障害には、グリア細胞の活性化に伴うグルタミン酸作動性神経系の前シナプス機能およびNMDA受容体を介する細胞内シグナル伝達の低下が関与しているものと示唆される
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