ミクログリアは神経傷害時に活性化され、死細胞を貪食除去しさまざまな生理活性因子を放出する。これらの因子には細胞に対し傷害性のもの、保護的なものの相反する効果を示すものがあり、また、ミクログリアも神経に対し傷害的あるいは保護的と相反する報告がある。我々はこれまでに、ATPて活性化を受けたミクログリアは神経細胞を神経細胞死から保護すること、この効果はATP受容体のうちイオンチャネル型P2X_7受容体の活性化とそれにより引き起こされる腫瘍壊死因子(TNF)の放出が重要な役割を果たすことなどを見出してきた。一方、リポポリッカライド(LPS)で過剰の活性化を受けたミクログリアは大量のTNFを放出するにもかかわらず神経保護効果を発揮せず、むしろ神経傷害的でさえある。しかし、ミクロクリアがあらかじめATPにより活性化を受けると、その後LPS刺激を受けても神経保護活性を発揮し続ける。このATPの効果もP2X_7受容体遮断薬で抑制されることから、P2X_7受容体はLPS刺激が発動する炎症性シグナルに対して抑制をかける可能性が示された。さらに、ミクログリアにはα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7受容体)が発現することを確認したが、この受容体は神経型α7受容体と異なり、イオンチャネルとしては機能せず、ホスフォリパーゼCを活性化しIP_3感受性カルシウムストアからカルシウムを放出する新しいタイプの受容体であることが明らかとなった。さらに、このα7受容体活性化はLPS刺激による大量のTNF遊離を抑制し、ATP刺激による神経保護的TNF遊離を増強することから、ミクログリアのα7受容体は、炎症を抑えミクログリアの神経保護活性を効率よく発揮させる重要な役割を果たす可能性が示唆された。
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