本研究課題では、アストロサイトの部位特異性を担う機能分子(アストロサイトの膜表面のレセプター、トランスポーター、チャネル、細胞接着因子類、あるいはアストロサイト産生性の神経栄養因子)の同定を行い、その発現量の差異が神経機能の調節にどのように関わっているか解明することを目的に研究を進めている。これまでに細胞培養法を用いて異なる脳内部位より培養したアストロサイト間で発現量に差異のある遺伝子を見いだしていたが、さらにvivoに近い系を用いるため、昨年度より迅速免疫組織染色法とlaser microdissection (LMD)法を用いて凍結切片から脳内部位別にアストロサイトを採取し、遺伝子発現をDNA microarrayにて比較することを開始した。8週齢の雄Wistar ratより脳全体を取り出し、ブレインマトリックスでスライスした後OCTコンパウンドで包埋し、6μmの凍結切片を作製した。一次抗体に抗GFAPを用い、ニチレイ、シンプルステインキットにて染色した。染色後、LMDにて大脳皮質と線条体から1000個ずつアストロサイトの細胞体部分を切除し、RNAを抽出、DNA microarrayにて比較を試みた。この方法で、これまでに、大脳皮質と線条体間で、数十の遺伝子に2倍以上の発現の違いが見いだされ、現在、in situ hybridization等による確認を行っている。
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