研究概要 |
脳神経回路形成が正常に行われているかどうかをチェックする機構の存在について仮説を立て、先行発達・発散系のモノアミン神経系の役割に焦点を絞り研究を行った。生後初期に、5,7-dihydroxy-tryptamine(5,7-DHT)や6-hydroxy-dopamine(6-OHDA)を脳室内投与し、それぞれ、セロトニン神経系終末やカテコールアミン神経終末をコントロールの20%以下に低下させて、行動およびそれぞれの神経伝達物質異常について検討してきた。前者は、寡動モデル(あるいは一部自閉的行動モデル)、後者は、多動症モデル(注意欠陥多動性障害ADHDモデル)ができる。このようなモデルでのグリア-ニューロン相関についての研究を進めるために、脳局所のモノアミン神経終末破壊後の全脳における反応部位を探った。セロトニン神経系が対象である実験においては、アストログリアにもかなりの量発現しているセロトニントランスポーター(セロトニン再取り込み部位)のタンパク発現量の指標である[11C]DASBを用いて、カニクイサルでのMicroPET(ポジトロンエミッショントモグラフィー)研究を行った。カニクイサルを麻酔下で前頭葉の一部(9/46野)に5,7-DHTを投与し、直径1mm程度の微小部分の機能低下を惹起した。MicroPETによる撮像は、破壊直前、破壊後7,14,28.56,92日後に行い、セロトニン神経の起始核である背側縫線核でその発現が28日後辺りでピークとなり、2-3倍に上昇するデータを得た。その後の観察により、92日後にはほぼ前値に戻った。このような一過性の起始核による反応が、セロトニン神経系に特異的なものであるのか、また、この発現はグリアの発現性によるものかどうか、グリオーシスに関するイメージングである[11C]PK11195を同じくMicroPETで行い、検討している。
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