研究課題/領域番号 |
16047227
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
稲津 正人 東京医科大学, 医学部, 助手 (00297269)
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研究分担者 |
武田 弘志 東京医科大学, 医学部, 助教授 (70206986)
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キーワード | L-カルニチン / アセチル-L-カルニチン / アルツハイマー病 / 老人性痴呆 / 慢性疲労症候群 / アストロサイト / トランスポーター / RNA干渉法 |
研究概要 |
脳機能維持に重要な内因性物質のレカルニチン(LC)は、最近、脂肪酸の燃焼を目的としたサプリメントとして注目を浴びている。また、そのアセチル誘導体のアセチル-L-カルニチン(ALC)は、アルツハイマー病や老人性痴呆における記憶障害を改善する報告がある。さらに、慢性疲労症候群における脳局所ALC代謝は、自律神経系調節や情動に関連している24野と意欲やコミュニケーションにおいて重要な9野においてのみ著減していることが報告されている。しかし、中枢神経系におけるALCの生理的役割については不明であり、神経およびグリア細胞へのALC取り込み機構については、全く解明されていない。本研究では、アストロサイトにおけるLCおよびALC取り込み機構について検討を行った。アストロサイトヘのLCおよびALC取り込みは、Na^+依存性であり、単一の輸送システムで構成されていた。LCおよびALC取り込みは、ALC、LC、L-アシルカルニチン類および有機カチオン系薬物により抑制された。アストロサイトにおけるカルニチントランスポーターの発現をRT-PCRにて検討した結果、OCTN2 mRNAが発現しており、OCTN1およびOCTN3 mRNAの発現は認められなかった。更に、Western blotにより70 kDaのOCTN2タンパクの発現を確認した。次に、RNA干渉法にてOCTN2 mRNA発現をノックダウンさせることにより、ALC取り込み量が有意に減少した。以上の結果より、アストロサイトにはカルニチントランスポーターのOCTN2が機能発現しており、これらはLCおよびALCの取り込みに関与していることが明らかとなった。ALCのアセチル基は、脳内でグルタミン酸、GABAおよびアセチルコリンの生合成に利用されており、これらの神経伝達物質の生合成障害がアルツハイマー病、老人性痴呆や慢性疲労症候群などの病態と関連している可能性が考えられる。従って、LCおよびALCが細胞内で利用されるには、その取り込み機構が律速段階となるため、精神神経疾患におけるOCTN2機能発現と臨床症状との関連性を明らかにすることにより、新たな治療戦略を提言できるものと思われる。
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