ラットの顔面神経切断時、顔面神経核にプラスミノーゲンアクチベーター(PA)が誘導された。このPAは阻害剤に対する感受性および分子量から、組織型PA(tPA)ではなく、ウロキナーゼ型PA(uPA)と同定された。そのuPAの産生経過は、ミクログリアの活性化経過とよく似ていることから、傷害された神経細胞によりミクログリアが活性化され、uPAを産生したものと推測された。そこでさらに、この現象を、培養ニューロンと培養ミクログリアを使用して検証した。 ミクログリアとニューロンの共培養および培養上清の添加実験により、uPAを産生/分泌する細胞はミクログリアであり、ニューロンはその産生/分泌を促進することが明らかになった。ニューロンの培養上清(NCM)自身はuPAをほとんど含まないにも関わらず、ミクログリアのuPA産生/分泌を容量依存的に促進した。このNCMによるミクログリアの活性化作用は、リポポリサッカライド(LPS)による活性化と異なり、TNFα、IL-1βや一酸化窒素(NO)を誘導しなかった。しかし、ミクログリア細胞内の5'-ヌクレオチダーゼや酸フォスファターゼの比活性を上昇させる活性を示した。また、このNCMの活性は、熱に比較的不安定であった。 以上の結果から、ニューロンはミクログリアの機能を調節する因子を産生すること、その因子はLPSによる活性化とは異なるメカニズムでミクログリアに作用することが示唆された。顔面神経切断時、このような因子がミクログリアに作用する可能性が推測される。
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