ラットの顔面神経切断時、神経核にurokinase-type plasminogen activator(uPA)が誘導される現象は、ニューロンとミクログリアの相互作用の結果生じたものと推測されたため、昨年度、その関係を培養系で解析し、ニューロンがミクログリアを刺激しそのuPA産生・分泌を著しく促進することを報告した。すなわち、ニューロンがミクログリアの性質を調節しうることが明らかになってきた。 ところで、このニューロン刺激を受けたミクログリアが傷害的性質を持つのか神経保護的性質を持つのは、生理学的/病理学的に大きな問題であるため、今年度はこの視点からの解析を行った。その結果、ニューロン刺激によりミクログリアでは、nerve growth factor(NGF)やneurotrophin-4/5が誘導されたり、transforming growth factor beta 1(TGFβ1)やglial cell line-derived neurotrophic factor(GDNF)の産生・分泌が促進されることが明らかになった。一方、傷害性/炎症性サイトカインであるtumor necrosis factor alpha(TNFα)やinterleukin-1 beta(IL-1β)、またnitric oxide(NO)は、ニューロン刺激によってミクログリアに誘導されることはなかった。以上の結果から、ニューロンの刺激は、ミクログリアを神経栄養的/神経保護的な方向に調節していると考えられた。
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