2年研究の最終年度となる本年度は、ラット大脳皮質アストロサイト初代培養細胞に発現するGABAトランスポーターの新規輸送活性調節機構を中心に検討を進めた。本申請者が用いたラットアストロサイト初代培養の系では主としてGAT2が発現していることが確認された。輸送の親和性を示すK_t値は9.3±2.8μM、capacityを示すV_<max>値は0.12±0.01nmol/mg protein/minであった。これらの結果は、GABA transporter (GAT1-3)各々のに対する選択的な阻害剤を用いた検討結果からも支持されるとともに、Western blottingや免疫組織染色によっても確認できた。また、非常に興味深いことにラットアストロサイトでのGABAの輸送はZn^<2+>によって濃度依存的に阻害され、そのK_i値は5.6±1.7μMであった。さらにこの初代培養細胞より調製した細胞膜画分を用いて、GABA_B受容体の機能解析を行った。ラットアストロサイトにおいては、これまで9種のisoformsが報告されているadenylylcyclase (AC1-9)のうちAC1とAC8を除く7種のACが発現していることがRT-PCRにより示され、抑制性Giタンパク質とcoupleしているAC5とAC6の機能的な発現も1μM forskolinで上昇したcAMPの生成が、GABA_B受容体のagonistであるbaclofenにより濃度依存的に抑制されたことから明らかとなった。この抑制は、GABA_B受容体の選択的なantagonistにより濃度依存的にreverseされた。さらに、RT-PCRおよびWestern blotting、蛍光免疫染色によってもラット大脳皮質アストロサイトにGABA_B受容体が発現していることが確認でき、これまで機能的にはほとんど報告がなされていなかったアストロサイトでのGABA_B受容体の発現を明らかに出来た。
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