研究概要 |
生体内ホモシステイン代謝異常は、酸化ストレスやニューロン死の引き金のみならず、神経管形成不全や脳血管障害、アルツハイマー病の主要なリスクファクターとなることが知られている。一方、ホモシステイン代謝の鍵酵素であるシスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)の遺伝子変異は、精神発達障害、痙攣発作、脳血管障害を症状とするホモシスチン尿症を引き起こす。しかしながら、CBSの変異がどのようなメカニズムを介して上記の疾患発症に関与しているのかは不明である。これまでの研究により、我々は胎生期から成熟期の脳においてCBSがラジアルグリア-アストロサイト細胞系譜で特異的に発現していることを明らかにした(Enokido et al.,論文投稿中)。また,CBSの機能異常は生体内での脂質代謝異常を引き起こす事を報告した(Namekata et al.,JBC,2004)。これらの結果は、生体内脂質代謝に大きく依存する事が知られる神経活動がCBSの異常により低下している事を示唆するとともに、これまでほとんど知られていなかったアストロサイトの機能異常を介した神経疾患発症機構の解明に極めて重要な知見であった。本年度は、アストロサイトとニューロンの相互作用を介してCBSの発現・機能がどの様に制御されているかを明らかとするとともに、アネトロサイトの機能異常による神経疾患発症メカニズムの解明に向けた細胞ならびに分子レベルで解析を進めたい。この点については、CBSの発現ならびに機能が神経伝達物質によって調節される事、およびアストロサイト由来の神経伝達調節物質の合成量が著しく低下している事を既に一観察している(Enokido et al.,投稿準備中)。
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