膜上でのソフトな分子間相互作用はtwo-hybrid法や免疫沈降法などでは解析できないことが問題である。そこで本研究ではソフトな分子間相互作用を特異的に阻害できるペプチドプローブをファージディスプレイライブラリーから同定することを試みる。細胞膜に対しペプチドのファージディスプレイライブラリーを作用させて、特異的に少数のみのファージが結合する条件を実現する。そこにアゴニストなどの刺激を与えた場合に刺激を受けたタンパク質が構造変化し分子間相互作用を起こすことにより排除されたファージを得る。そしてそのファージから得られたペプチドがソフトな分子間相互作用を阻害あるいは探知できるプローブとして利用できるかどうか検証する。まずモデル実験としてはGタンパク質共役受容体と共役するGタンパク質のαサブユニットを人工的に融合させたものを発現させた細胞膜を用いた。 酸添加条件で溶出したファージから8種類、アセチルコリン添加条件で溶出したファージから2種類のペプチド配列を得た。そのうち、酸添加条件で溶出したファージ1種類とアセチルコリン添加条件で溶出したファージ2種類は12残基中、同一の箇所で4残基が一致し、2残基は類縁のアミノ酸であった。そこでこれら3種のペプチド配列でもっとも相同性が高い部分の配列をもつ6量体ペプチドを化学合成しリガンド活性を示すかどうか調べた。するとこのペプチドは1μMのカルバコールの存在下でさらに受容体の活性化を20%程度促進するアロステリックリガンドとしての性質を示した
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