研究概要 |
我々はプロテアーゼによる限定分解と化学修飾を施して無毒化したPFOタンパク質が、ラフトを検出するプローブとして利用できる事を見出した。さらにPFOタンパク質中の約110アミノ酸からなる部位(D4)が、ラフト中のコレステロールへの選択的な結合能を有する事が分かった。 これまでD4は、大腸菌で大量発現させ、菌体破砕後の可溶性画分から調製していた。今回不溶性画分から大量に調製する方法を確立した。TritonX-100で洗浄し、グアニジンで可溶化し、ここにアルギニンを加えた。これを透析してグアニジン濃度を下げる事でリフォールディングを行った。得られたD4は従来の方法で調製したものと同様のCDスペクトルを与えた。^<13>C,^<15>N2重標識したD4を同様の手法で調製し、現在3重共鳴NMR法による共鳴線の帰属を進行させているところである。 次に膜環境を模した状態における構造解析を行う為に、D4をミセルに取り込ませる事を試みた。各種のdetergentを試みた結果、DPCが最も良好な結果を与えた。この状態におけるCDスペクトルは、水中におけるものとは少し異なっていた。 さらにより膜の環境に近づける為に、コレステロール含有のリポソームを調製し、そこにD4を取り込ませた。この状態のCDスペクトルも、水中におけるものとは少し異なっていた。今後はこの系に転移交差飽和法を適用する事によって、D4とコレステロール及びD4と脂質の相互作用様式を同定できると考えられる。 タンパク質とリガンドの複合体の構造決定及び水素結合の同定手法の開発等も行なったが、これらの技術は、今後膜結合に伴うPFOタンパク質の構造変化及びコレステロール・脂質との結合様式の原子レベルの分解能での解明に利用できる。
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