研究概要 |
チトクロムb_6f複合体は、葉緑体のチラコイド膜中に存在し、2量体あたり16個のサブユニットによって構成される分子量22万の超分子複合体である。高等植物ではチラコイド膜のストローマ側にフェレドキシン(Fd)-NADP^+還元酵素(FNR)がサブユニットとして結合していることがわかっていたため、界面活性剤で可溶化したホウレン草のb_6f複合体を用いて、Fdをセファロース樹脂に固定したFd-カラムによる相互作用解析を行ったところ、FdとFNR : b_6f複合体の間の相互作用は非常に弱く、ストローマ空間に存在するFNRとは明らかに違う親和性を示した。b_6f複合体上に結合したFNRと、ストローマ空間に存在するFNRとの間にFdに対する相互作用の違いが見られた為、ゲノム情報が豊富なトウモロコシの葉を用いてマススペクトル解析を行ったところ、トウモロコシFNRには3種の分子種(FNR1,FNR2,FNR3)が存在し、FNR1とFNR2が膜に結合した状態で、FNR3はストローマに可溶性状態で存在していることが判明した。つまり、チトクロムb_6f複合体と結合しているのはFNR1とFNR2アイソザイムで、FNR3アイソザイムは単独でストローマに局在し、チトクロムb_6f複合体はFNRの特定の分子種(FNR1とFNR2)を介してFdと相互作用していることを突き止めた。 複合体状態のFNR1と大腸菌で発現させた組換え体FNR1とでは、Fd-カラムからの溶出パターンに大きな違いが見られるので、b_6f複合体と結合するFNR1に何らかの翻訳後修飾が存在する可能性も示唆される。
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