研究課題
ハイスループットなタンパク質の構造機能相関の解明を行うにあたり、均質なタンパク質の大量調整法の確立は必要不可欠である。これまでに我々は、小麦胚芽抽出物を用いた無細胞タンパク質合成系を利用することで、生理活性を保持したタンパク質大量発現系を確立するとともに、アミノ酸選択的安定同位体標識技術を、プロリン以外の19種類のアミノ酸に対して確立した。一方、多くの植物では、プロリンとグルタミン酸との間で相互変換を行う系が存在することが知られている。これらの系の存在から我々は、^1H-^<15>N HSQCスペクトルの帰属に基づくタンパク質主鎖の構造情報解析には殆ど影響しないが、^<13>C標識を行うことによる側鎖の構造情報解析においては無視できない影響を与えると予測し、相互変換の系を効率的にブロックする手法開発を行った。プロリンからグルタミン酸への変換において作用するプロリン脱水素酵素活性を阻害するために、親水性置換基による溶解度向上が図られたヒドロキシキノリン誘導体を用い、タンパク質合成能を阻害しない濃度域における阻害能を評価した。一方、グルタミン酸のプロリンへの変換において作用する2種の酵素のうちP5CRはMg^<2+>等の2価イオン濃度が高いと活性阻害を受けるが、高いマグネシウムイオン濃度下ではタンパク質合成が阻害されるため、もう1つの酵素であるP5CSのオルニチンによる阻害(0.37mM at 50% inhibition)の有効性を評価した。いずれの経路についても、^<13>C,^<15>N二重標識プロリンならびにプロリン以外の^<15>N単独標識アミノ酸によるHNCOスペクトル測定により評価を行った。さらに、小麦の種類による差異、小麦胚芽を抽出する際の有機溶媒処理の条件による相違、についても検討を行い、これらの検討結果を総合することでプロリンとグルタミン酸の側鎖における選択的標識化技術を完成した。
すべて 2004
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