研究概要 |
細胞が正常に機能し調節されるためには、細胞の極性が適切に形成されることが必要である。細胞極性が決定される時には、細胞膜の特定の領域に、極性決定のための蛋白質複合体が形成される。本研究は、哺乳類上皮細胞の極性決定に必要な「aPKC-Par蛋白質複合体(Par6/aPKC/Par3から成る)」が、タイトジャンクション(TJ)形成部位の膜直下に事前に形成されるための分子機構を明らかにすることを目的としている。平成17年度私達は以下のことを見い出した。 (1)Par6とaPKCの蛋白質間相互作用は、それぞれのPB1ドメイン(私達が見い出した新規ドメイン)が担うことを私達は明らかにしていたが、本年度は、稲垣教授(北大・院薬)との共同研究によって,Par6-PB1ドメインとaPKC-PB1ドメインの複合体の構造をX線結晶解析により決定した。その情報を基に、哺乳類上皮細胞の細胞極性決定にPar6-aPKC相互作用が必須であることを示し、関与するPar6上およびaPKC上の新規なアミノ酸残基を同定した。 (2)Par3に結合する新規な蛋白質を同定する目的で、ヒト胎児脳cDNAライブラリーを用いてPar3をbaitとした酵母two-hybrid法によるスクリーニングを行い、14-3-3蛋白質がPar3α及びPar3β(私達が見い出したPar3の新規ホモログ)に特異的に結合することを見い出した。更に、この結合はリン酸化依存的であること、Par3αのSer-814及びPar3βのSer-764のリン酸化が必須であること等を明らかにした。 (3)Par3の哺乳類上皮細胞のTJへの局在には、C末側に存在する数十アミノ酸から成る領域が必要であることを示し、更に、この領域は単独である種の脂質と特異的に結合すること、また、この結合はPar3のTJへの局在に必要であるが十分ではないことを示した。
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