熊本大学谷らによって酵母のmRNAの核外輸送ができない温度感受性株の一つの原因蛋白質として見出されたPtr7はATP/GTP結合モチーフをもつ酵母の生育に必須の新規蛋白質で、核膜を介した核と細胞質間の双方向の輸送に必須であることが示されている。こ本研究の目的は、この新たに見出されたPtr7のX線結晶構造解析を行い、核膜孔複合体因子の一部に見られ、輸送に関わる蛋白質と相互作用するFGリピート領域と同様の配列をもつ意味やヒトPtr7と相互作用すると考えられている幾つかの蛋白質との核膜を介したソフトな相互作用を解明することである。本年度の成果は以下の通りである。 1.現在、Ptr7蛋白質の最も有望な大量産生系は封入体として生じる蛋白質を6M尿素で可溶化後、透析法でゆっくり尿素の濃度を薄くして行くことによって、蛋白質のリフォールディングを行い、大腸菌1リットルの培養で数100μgの蛋白質が得られる条件である。大腸菌の培養量を増やしてより大量に精製するという方向で精製を行った。Prt7蛋白質を精製する都度、結晶が得られた沈殿剤にPEG6000を用いた条件を中心にしつつ、広範な条件の結晶化のスクリーニングを行い、X線解析に適した結晶の調製に取り組んだ。 2.合わせてより効率のよいリフォールデリング条件の検索を、主に添加物を加えて検討したが、現在のところ今以上に効率よく精製できる条件は見つかっていない。1の方法でPtr7の精製を行う一方、平行して、可溶性でより大量に得られる発現系の構築のため、種々の発現ベクターや大腸菌宿主を用いて、培養条件(温度、誘導方法、時間など)を検討した。現在のところpBluescrpt系とp ET系ベクターをもとに独自に作成した発現ベクターを用いたものが有望と思われる。
|