研究概要 |
日本人のがんの要因探索とがん予防指針の策定を目指し、日本人の生活習慣と遺伝的素因に対応した新しいがん予防方法を科学的に構築していくための大規模集団を対象とした分子疫学コーホート研究を実施するため、共同研究として全国規模の研究組織を構築した。これまでに、9地域での収集作業を開始し、平成22年3月末時点で、約48,000人からの試料を収集した。ヒトゲノム・プロテオミクス研究で得られた成果を基盤に、個々のがんの発生と悪性形質獲得にいたる病態の詳細を解明する研究が継続して実施された。また、遺伝子発現解析やSNPなどの遺伝子多型研究を体系的かつ網羅的に実践することによって、個人によって異なるがんの性質や、がんになりやすさの体質を科学的に解明し、個々の患者に至適の予防法や治療法を提供できる研究を推進した。疫学に関しては、科学的根拠に基づいて開発された標準的な研究方法論を用い、作業仮説の実証に適した地域と対象者を選び、系統的、かっ継続的な研究を推進させている。 また、遺伝子多型などゲノム情報を考慮した個々人の発がんリスクを評価する分子疫学研究、特に、日本と文化的・遺伝学的背景を共有する、あるいは異なった特性を有するアジア太平洋諸国における民族疫学研究を進ている。さらに、発がんリスクを示す生体指標を開発するために、がん民族疫学の分野とも連携しながら研究を進め、幅広い臓器にっいて高危険群の発がんメカニズムと代理指標を検討した。 2010年1月14日~15日には学術総合センターにて5領域合同シンポジウムが開催されがん診断と疫学領域からは領域代表中村と副領域代表の浜島、稲澤がそれぞれ「がんペプチドワクチンTRネットワークの構築と課題」、「がん生体指標と遺伝子多型」、「LAPTM5蓄積で誘導されるリソゾーム細胞死と神経芽腫の自然退縮機構」のテーマで研究発表を行った。
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