研究概要 |
計画研究最終年度にあたり、総括班は多次元的脳研究の推進と統合的脳研究の促進という目標を達成する活動を強化した。研究者育成・支援委員会では、統合的・学際的観点から脳研究者を育成する研究者育成支援活動を促進した。支援班は、脳研究のためのバイオリソース開発と供給のための拠点と活動を増強した。世界における脳研究手法の動向を検討し、脳計測のための新技術の可能性と必要性を調べた。他方、国際生理学会(IUPS)と共催することにより、大脳基底核の統合的・学際的研究に関するシンポジウムを開催した。 5領域全体の行事として、ワークショップ及びサテライトシンポジウムを離した。統合的脳研究推進の趣旨に基づいた招待講演及び領域研究者全員による研究発表を行い、研究交流を進めた。冬には一般公開シンポジウムを開催し、分子脳科学、脳の神経回路、脳のシステム、脳の病態及び統合的脳研究の研究成果を発表した。 43件の公募研究を統括し、研究班会議を開催して研究内容の検討を行い、研究推進を図った。また計画研究については、(1)大脳視覚野の可塑性の発現機構を明らかにした。胎生期に脳をつくる遺伝子Otx2ホメオタンパク質が視覚経験によって網膜から大脳へ運ばれ、PV細胞に蓄積されることにより、視覚野の臨界期を促すことがわかった。(2)神経突起などの伸張に関連する遺伝子Gap-43の発現を解析し、損傷前に比べて、損傷後M1,PMv,S1の2-3層とM1の5層の大型錐体細胞での発現の亢進が確認された。さらに、(3)脳基底核の黒質ドーパミン細胞に、組み換え体ウイルスベクターを用いて、ドーパミン細胞死を抑制する機能分子であるcalbindinの遺伝子導入を行い、パーキンソン病の発症を防御することに成功した。他方、(4)大脳内側の高次運動野において、秒単位の時間を生成し、行動の発現を導く役割をする細胞活動を発見した。他方、ヒトの内側前頭葉連合野に行動決定のルール発見に関与する部位を見出した。
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