研究課題
グラファイト表面に吸着したカーボンナノチューブを試料として、走査型トンネル顕微鏡によるナノメートルオーダーの形態像を得ると同時に、トンネルプローブ増強ラマンスペクトルの測定を行った。トンネルプローブは銀・銅合金を用いて独自の方法により製作した。その結果、ストークス領域においてはプローブ増強効果が確認され、ラマンスペクトルによるマッピングが可能であることが示された。一方、アンチストークス線の場合には明瞭なプローブ増強は確認されなかった。ラマンスペクトルの特定の波長を選択し、光強度によってナノメートル領域の画像を得る手法の開発も行った。この結果、数100ナノメートル以下の空間分解能があることが示された。空間分解能とアンチストークス線検出には、測定に適当な試料を探索する必要があり、今後の課題と考えられる。また、半導体量子ドットをカーボンナノチューブに結合させた試料を、酸化錫インジウム透明電極上に吸着させ、これを光励起することにより発光を観測し、この発光に及ぼすトンネルプローブの影響についても研究を行った。プローブとしては、電解研磨した白金製のものを用いた。プローブに流れる電流値を制御して、プローブと量子ドットの距離の関数として発光強度の変化を調べた。この結果、プローブが無限に離れたところから量子ドットに近づくにつれて発光強度は増加し、数ナノメートルでピーク値に達するが、さらに1ナノメートルの接近によって発光強度は半分程度に消光されることが確認された。サブナノメートルオーダーのプローブ位置の変化が、発光強度に大きく影響することが明らかになったので、より空間分解能の高いスペクトル測定への道を開くものとして期待できる。
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