本課題は最近開発したオージェ電子プローブエネルギー分散型表面XAFS法を高度化し、表面反応などの動的表面過程の研究を行うことを目的としている。これまで、反応が進行する表面の吸着種の観測を行ってきたが、気相に脱離する生成種の観測も反応の理解に重要である場合が多いことを踏まえて、表面と気相の両方を同時にモニターできるようにシステムを改良した。このシステムによってRh(111)上のNO還元反応のメカニズムを明らかにした。すなわち、原子状窒素を吸着させておき、そこにNOガスを流しながら、表面の原子状窒素、NOを表面XAFSで測定し、気相への生成種(この場合N_2O)を質量分析計で同時測定した。その結果、表面の原子状窒素が1原子消費されると、気相に1分子のN_2Oが生成することが明らかになった。さらに反応中の安定precursorとして、NOダイマーを表面XAFSで直接捉えることができた。これらのことを合わせて、precursor-mediated reaction modelでこの反応を理解できることを示した。NOダイマーは有機反応や生体反応で中間体として働くことが知られているが、表面反応でもNOダイマーが関わることを分光法的に実証した初めての例である。 さらに、我々の手法と相補的である高速XPSを用いてPd(111)上のCO酸化反応のメカニズムを調べる研究を行った。高速XPSの実験はスウェーデン国立放射光施設MAX-Labのアンジュレータービームラインで行った。測定結果を解析した結果表面酸素の構造相転移に伴って、反応性が劇的に変化することが明らかになった。詳細に解析すると、表面に吸着したすべての、COではなく、弱く束縛されたCO分子のみが反応に直接関与していることが分かった。
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