本研究では、光架橋反応を用いて、二成分高分子混合系の相分離を引き起こし、発現した相分離構造の周期やその分布を制御した。バルク状高分子中の化学反応が、分子鎖セグメントの自由体積分布などの局所の不均一性により、反応が空間的に非一様的に進行していく。架橋反応の場合では、反応のこの不均一性により、混合系内に局所的な架橋密度が形成される。結果として、反応が進行すると共にこの局所ひずみが増大し、臨界点近傍では、生成された様々な濃度ゆらぎとカップリングして、モルフォロジーに大きな影響を及ぼす。ここでは、 1)架橋反応の不均一性によって混合系に形成した局所(ナノスケール)弾性ひずみの直接計測とその緩和過程の測定を行った。さらに、この局所弾性ひずみを計測するためにMach-Zehnder干渉計を設計して、光照射しながら、試料中に生成した弾性ひずみをin situ測定し、解析を行った。 一方、紫外光照射下で進行している反応の動力学を紫外可視分光光度計により追跡した。この動力学のデータから照射時間と共に生成された架橋密度が得られた。この架橋の結果と生成した弾性ひずみとの間に強い相関関係があることがわかった。 2)上述した分子鎖セグメントの自由体積分布などの局所の不均一性によりheterogeneous kineticsを示す。特に混合系の場合では、この分子鎖の自由体積分布に加えて、異なったガラス転移に起因する動的不均一性によってこのheterogeneous kineticsが増大する。本研究では、このheterogeneous kineticsを利用して、相分離しつつある高分子混合系に多重時間と空間スケールの臨界現象を引き起こして、種々の階層凝集構造を発現させることができた。現在、この階層構造の形成動力学を解析している。 次年度には、高分子系における時間および空間の階層性の発現機構とその階層間のダイナミクスを解明する予定である。
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