平成17年度は下記した3つの研究課題を遂行して、次の結果を得た。 1)光架橋した高分子に発現したナノ領域における弾性ひずみの観測・解析: バルク状高分子に化学反応を導入した場合、局所構造の不均一性(自由体積の分布など)により、反応がセグメントのオーダーで非一様に進行する。分子鎖を架橋する場合、混合系内に弾性ひずみが誘発される。反応の進行度によって、この弾性歪が緩和したり、系内に残留したりして、反応誘起相分離機構やモルフォロジーに大きな影響を及ぼす。このひずみをin situ観測するためにMach-Zehnder干渉計を作製して、測定を行った。結果として、光架橋によって混合系内に発生したナノメータ域の弾性ひずみとその緩和過程を測定することができた。 2)光照射によるミクロン域の傾斜構造の設計と解析: 光が試料中を通過する際、Lambert-Beerの法則に従って、伝播した距離の指数関数的に減衰することは知られている。一方では、光反応で高分子混合系の相分離を誘起する場合、反応収率がある臨界値に達すると系が不安定になり、相分離が起こる。この事実を利用して、様々な強度の紫外光を高分子混合物に照射し、相分離を起こした。結果として、ミクロン域における傾斜共連続構造を有する高分子が設計できた。 相 3)空間変調に引き起こされた相分離構造と物性: 高分子混合系が熱力学的に不安定になって分離する場合、まず周期構造が発現・成長してから、ドロップレットに粗大化し、次第に混合系が相平衡に達する。最初に発現する構造の周期まで混合系を空間的に閉じ込めるため、Computer-Assisted Irradiation(CAI)法を開発した。この新しい方法を用いると、任意の光のパターンのみならず、光パターンの時間および空間周期も設定して、照射することができた。 この方法を用いることにより、20ミクロンまで制限できることがわかった。
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