研究概要 |
グルタミン酸受容体は高等動物の中枢神経シナプスにおいて興奮性神経伝達の中心的役割を司るのみならず、記憶や学習などの脳の高次機能、種々の脳疾患における神経細胞死などに深く関与している。近年の分子生物学的研究の飛躍的進展によりグルタミン酸受容体の解明が進み、構造的にも機能的にも著しい多様性を持った数多くのサブタイプに細分化されているが、個々のサブタイプの生理機能は未だ完全には明らかにされていない。本研究では、グルタミン酸受容体サブタイプ特異的アゴニストである海産興奮性アミノ酸ダイシハーベイン(DH)類とその類縁体の効率的合成と構造展開により、特異的かつ高親和性の神経機能分子を創製することを目的とした。 これまでのDH類の全合成と構造-活性相関研究の結果から、DHの6員環エーテル上のC8,C9位の官能基がサブタイプ選択性に関与している可能性を明らかにしてきた。そこで、サブタイプ高選択的なリガンド開発へ向けて、さらにC8,9位官能基に関する構造-活性相関研究を行うためにダイシハーベイン類縁体の効率的な合成経路を開発した。トリアセチルアラビナールに対するC-グリコシル化と位置選択的なジヒドロキシル化反応を鍵反応としてDH類縁体(8,9-epi-ネオダイシハーベインAに相当する化合物)の合成を達成した。 また、カイニン酸受容体サブタイプを発現させた細胞系を用いた電気生理学実験から、C8,C9位の官能基を省略した単純なモデル化合物がカイニン酸受容体サブタイプGluR5の選択的なアンタゴニストとであることを見出した(IC_<50>値:41nM)。
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