1.式根島産海綿Asteropus simplex由来のシアリダーゼ阻害物質 A.simplexの抽出物のブタノール画分をゲルろ過および逆相HPLCで精製し、シアリダーゼ阻害活性(IC_<50>値、37nM)を示す化合物、asteropine Aを単離した。Asteropine Aは異常アミノ酸を含まない36残基ペプチドで、6残基のCysが3つのジスルフィド結合を形成していた。NMRから導いたasteropine Aの立体構造は、「シスチンノット」と呼ばれる、ジスルフィド結合で分子内に結び目様の構造を形成する一群のペプチドと高い類似性を示した(図1)。シスチンノットの例として、イモガイ毒のωコノトキシンなどの毒性ペプチドが挙げられる。既報の「シスチンノット」ペプチドの大多数のものの分子表面には塩基性アミノ酸が多数存在するが、asteropine Aの分子表面には酸性アミノ酸が多数認められ、この性状のためシアリダーゼ活性が発現するものと推定された。 2.獅子島産ウスボヤ科群体ボヤ由来の抗菌性セリノリピド ウスボヤ科(Didemnidae)群体ボヤの抽出物のブタノール画分を逆相クロマトグラフィーで精製し、抗菌成分を単離した。主成分のshishididemniol A(1)およびB(2)は、高度に酸化されたC28カルボン酸のω位にセリノール基が結合しており、フェノール性水酸基がセリノールとエーテル結合を形成したオクトパミンがC28カルボン酸のカルボキシル基とアミド結合を形成していた(図2)。C28カルボン酸の16位には孤立した水酸基が存在し、この絶対配置の決定に楠見らが開発した2NMA法が有効であった。
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