研究概要 |
カルボアニオン転位による新変換法の開発に関して,2つの課題について検討した. 1)環拡大型アセタール[2,3]-Wittig転位による中員環ビニルエーテルの新規合成法開発:α,β-不飽和アルデヒドと適切なジオールから調製した環状アリルアセタールの環拡大型アニオン転位によって,海洋産生理活性天然物などの単位構造として重要な中員環ビニルエーテルを簡便に合成することに成功した.2)環拡大型ヘミアミナールのカルボアニオン転位による中員環アミド類の新規合成法開発:フタルイミド類から一工程で調製したヘミアミナールに強塩基を作用させると,環拡大型[1,2]-もしくは[2,3]-転位が進行し,多官能基化された含窒素環状化合物が立体選択的に得られることを見出した. 面不斉型キラル合成素子の開発と応用に関して,芳香環を含む新規な9員環アミドを合成し,その立体化学挙動を精査した.その結果,この化合物が室温下,安定な面不斉を有していることを見出した.さらに,エナンチオマー分割により得た光学活性な9員環アミドの分子間反応(エポキシ化),分子内渡環反応(aza-Wittig転位)がともに,立体特異的に進行することを明らかにした.また,本aza-Wittig転位体を鍵中間体として活用することでメラノコルチン受容体(MC4R)のアゴニストであるペプチドの不斉合成に成功した.一方,エポキシ化体にLewis酸を作用させると特異な渡環反応が進行し,三環性化合物が立体選択的に得られることを見出した.
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