脂質代謝との関連性から生活習慣病と感染症に焦点を当て、微生物資源を対象に脂質代謝を制御する機能分子の探索に力を入れた。生活習慣病に関わる評価系として、1)アシルCoA:コレステロールアシル転移酵素(ACAT)アイソザイム(ACAT1とACAT2)に対する阻害の特異性を観察する系、感染症に関わる評価系として、2)エルゴステロール生合成を阻害する抗真菌剤の活性を賦活化させる活性物質を選択する評価系、3)抗結核活性を評価する系を基軸に行なった。その結果、1)の系からはspylidone、2)の系からはcitridone類とphenatic acid類、3)の系からはlariatin類を発見した。またMRSAなど日和見感染症の原因微生物に対する新しい標的分子としてイソプレノイド生合成経路に注目し、評価系を構築した。すなわち、本年度は大腸菌で生産させた黄色ブドウ球菌由来のundecaprenylpyrophosphate synthaseを用いたin vitro酵素反応系を構築した。 これまで本研究グループが発見した微生物由来ACAT阻害剤についてアイソザイムに対する選択性を明らかにした結果、beauvericin、purpactin類、glisopreninA、terpendoleC、spylidoneはACAT1とACAT2の両アイソザイムを、beauveriolideIIIは比較的ACAT1を阻害したのに対し、pyripyropeneAはACAT2を選択的に阻害した。特にpyripyropene Aは、現在までACAT2に選択性を示す唯一の化合物であることが明らかとなった。 Beauveriolideは、コンビケムの手法により300種の誘導体合成が終了し、これら誘導体のACAT1とACAT2に対する選択性を評価した、その結果、さまざまな選択性のプロファイルを示す誘導体を見いだした。
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