マメ科植物が夜になると葉を閉じ、朝には再び葉を開く就眠運動は、紀元前から知られており、生物時計によってコントロールされる。しかし、運動に関与する化学物質の研究は、その単離の難しさ故に困難を極めた。申請者は、マメ科植物に、葉を閉じさせる就眠物質と葉を開かせる覚醒物質がペアで含まれることを初めて明らかにし、その生物活性が植物属特異的であることを明らかにした。生物時計による運動のコントロールは、特定の時間になると活性化される酵素β-グルコシダーゼによって配糖体型活性物質が加水分解され、植物中で就眠・覚醒両物質の濃度バランスが逆転することで行われる。就眠運動調節の鍵酵素β-グルコシダーゼを精製し、その遺伝子情報を明らかにすることで、マメ科植物の生活環制御に新しい戦略を提供できる。しかし、本酵素は不安定で、また多くのアイソザイムが存在するため、活性物質を基質とする酵素の精製は困難であった。申請者は、酵素による加水分解を受けないアザ糖型活性物質の新規合成法の開発に成功し、酵素精製に有効なグルコノアミジン型アフィニティーリガンドを開発した。合成したリガンドは、β-グルコシダーゼ特異的な阻害活性を示し、そのKi値は1.6μMであった。本法は、任意の糖の無保護チオラクタム誘導体に、望みのアグリコンを高収率で導入しうる方法であり、今後、各種アグリコン特異的β-グルコシダーゼ精製のためのリガンド合成に利用されると思われる。今後、酵素の精製を行い、その後、一次配列の決定、酵素遺伝子の発現を検討し、リズム調節機構を遺伝子レベルで解明する。
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