本年度の研究では、アミジン型阻害剤を用いた就眠運動鍵酵素の精製、電子顕微鏡観察用EMプローブの開発と活性物質作用部位のナノメートルスケール精密解析、ハエトリソウの記憶物質の精製の3点について報告する。 1)機能性活性物質を用いた就眠運動の生物有機化学 就眠・覚醒物質の濃度バランスは配糖体型活性物質のβ-glucosidaseによる分解により制御されており、就眠運動に関する研究を生物時計へと展開していくためには、本酵素の精製・クローニングが重要である。阻害活性が高いグルコノアミジン骨格に覚醒物質イソレスペデジン酸のアグリコン部を導入したグルコノアミジン型阻害剤を合成し、これをリガンドとしたアフィニティークロマトによる目的酵素の精製を計画した。無保護チオノラクタムをNBSにより活性化する簡便な新規アミジン合成法の開発により、グルコノアミジン型覚醒物質の合成に成功した^<1)>。これをリガンドとしたアフィニティーゲルを合成し、粗酵素溶液の精製を行ったところ、1M D-グルコース溶出画分は強いβ-glucosidase活性を示し、SDS-PAGEでほぼ単一なバンドを与えた。 また、光親和性基および抗原となるFITCを導入した電子顕微鏡観察用プローブ(EMプローブ)を開発した。EMプローブ分子中には、光親和性基ベンゾフェノンの光励起によって影響を受けないFITC基を抗原として導入した。これを用いて、昨年度、同定に成功した活性物質受容体(210&180kDa)が、運動細胞原形質膜状に存在することをナノメートルスケールで直接観察することに成功した。これによって、活性物質の生体内ダイナミズムに関する重要な知見が得られた。
|