1.NF-κB阻害剤(-)-DHMEQによるVEGF-Cの発現抑制:私達の創製した(-)-DHMEQのキラル対合成はまだ検討中である。新しい活性として、ヒト乳癌MDA-MB-231細胞においてVEGF-Aに影響を与えることなく、VEGF-Cのみの発現と分泌を抑制することがわかった。またTNF-αで刺激したMCF-7細胞においてもVEGF-Cの発現を特異的に阻害することがわかった。VEGF-Cはリンパ管生成に重要なのでin vivoにおいても(-)-DHMEQはリンパ管による癌転移の抑制効果が期待される。 2.9-methylstreptimidoneによるNF-κB活性の阻害:LPSによる細胞のNO産生の阻害を指標に新しいNF-κB阻害剤の探索をしたところ、放線菌から既知物質の9-methylstreptimidoneが得られた。この化合物はマクロファージ細胞においてNO産生を阻害し、ヒトT細胞白血病Jurkat細胞においてTNF-αによるNF-κBの活性化を阻害した。またNF-κBが活性化している成人T細胞白血病細胞に選択的にアポトーシスを誘導した。 3.コノフィリンの標的タンパク質の検出:コノフィリンは私達が抗糖尿病活性を見出し、福山らが最近、初めての全合成に成功した複雑な構造のアルカロイドである。コノフィリン類似体を準備してより強力な化合物を探索したが、まだ得られていない。今回、コノフィリンのプローブになる誘導体を合成して、標的タンパク質の新しい知見を得た。 4.SurfactinによるLPS活性の阻害:LPSはグラム陰性菌の細胞壁成分由来の毒素であり、グラム陰性菌感染による炎症性疾患の原因になる。そこでLPSが誘導するヒト臍帯静脈内皮細胞とヒト急性骨髄球性白血病細胞株HL-60細胞の接着を阻害する物質の探索を行い、細菌株の培養液から既知環状リポペプチドsurfactinを得た。本年度は構造の確認をしてさらに表面プラズモン解析などからsurfactinはlipid Aに直接結合してLPSを不活性化することを見出した。
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