今年度はNF-κB阻害物質(-)-DHMEQの標的分子を解明することができた。1)(-)-DHMEQの標的分子の解明。私達が発見した(-)-DHMEQは様々な病態動物モデルで強い治療効果を示した。しかし、その標的分子は未解明であった。今回、(-)-DHMEQはp65に直接結合して、DNA結合能を失わせることを明らかにした。 recombinant p65に対して(-)-DHMEQは1:1量で、in vitroでDNA結合を抑制した。SPRにおいてresponseがあり、MALDI-TOF MSにおいて1:1の共有結合が示された。さらに特定のアミノ酸に結合することもわかった。さらに制限プロテアーゼを用いたprotein mass fingerprintを応用したMALDI-TOF MS測定からも特定のアミノ酸への結合が示された。以上より、(-)-DHMEQはNF-κB構成因子の特定のアミノ酸に共有結合することでNF-κBのDNA結合能を抑制することがわかった。この結果は、より有効なNF-κB阻害剤創製の指標となると考えられる(論文投稿中)。2) conophyllineの標的分子ARL61Pの機能を調べるためにSiRNAによるノックダウンマウスを作成した。3) 新しいNF-κB阻害剤の発見。微生物よりNO産生阻害活性、NF-κB阻害活性のある既知物質を微生物から得た(論文準備中)。4) (-)-DHMEQを光学分割する方法として酵素リパーゼを用いる方法を見出したが、その溶液をかえることでより効率よく光学活性体が得られるようになった。5) (-)-DHMEQによる癌細胞の転移・浸潤能の抑制。高転移性乳癌細胞であるMDA-MB-231細胞において(-)-DHMEQは、CXCR4の発現を抑制することにより、転移部位へのchemotaxisを抑制するほか、autocrine機構により自身の遊走・浸潤能を低下させることが示唆された。
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