研究概要 |
常緑針葉低木であるハイイヌガヤから単離された、特異な融合アザ五環性構造を有する抗腫瘍性アルカロイドであるセファロサイクリジンAの全合成研究の一環として、当該年度においてはラセミ体を用いて基本構造の立体選択的合成法の確立を目的として検討し以下の成果を得た。 シクロペンタジエニドナトリウムより4工程で導かれた(1R^*,2S^*,3R^*,4S^*)-2-(ベンジルオキシ)メチル-1-(t-ブチルジメチルシロキシ)-3,4-エポキシシクロペンタンに対し、ヨウ化銅(I)存在下,3,4-(メチレンジオキシ)フェニルマグネシウムプロミドを作用させたところ,エポキシドへの位置及び立体選択的開環アリール化が進行し、(1R^*,2S^*,3R^*,5S^*)-2-(ベンジルオキシ)メチル-1-(t-ブチルジメチルシロキシ)-5-[(3,4-メチレンジオキシ)フェニル]シクロペンタン-1-オールが得られた。本化合物よりさらに11工程を経て誘導した(1S^*,4S^*,5S^*)-5-アセトキシ-4-[(3,4-メチレンジオキシ)フェニ]-2-シクロペンテン-1-カルボン酸に、無水トリフルオロ酢酸次いで三フッ化ホウ素エーテル錯体を作用させる分子内Friedel-Crafts反応を適用することにより、セファロサイクリジンAのABC環に相当する、C10位に酸素官能基を有するベンゾビシクロ[3.2.1]オクタン-9-オン誘導体を合成することができた。次いで、C9位カルポニル基をシアノヒドリンシリルエーテルに変換の後ヒドリド還元することにより、(5S^*,8R^*,9S^*,10S^*)-9(8H)-アミノメチル-2,3-メチレンジオキシ-5,8-メタノ-5H-ベンゾシクロヘプテン-9,10-ジオールを立体選択的に合成することができた。
|