研究課題
多様な生理活性を併せもつ天然生理活性物質(天然物)においては、ある活性が他の活性の副作用として働き、実用化に問題を生じる場合が少なくない。したがって、それらの活性発現機構を明らかにすることによって、活性を構造ユニット別に分離することができれば、副作用の低減のみならず望みの活性を増強できる可能性がある。それはナノレベル以下で精密に分子設計・合成することにより初めて成し遂げられる。本年度は、以下の4種の天然生理活性物質の全合成を達成した。1)Ca2+シグナル阻害活性を示すYCM1008Aの最初の全合成を、N-および0-付加環化反応を連続的に起こさせ立体選択的に基本骨格と末端のメチル基を構築する方法を開発することにより、想定される4つの異性体をすべて合成して達成すると共に絶対構造を決定した。さらに、この構造-活性相関研究の結果、末端のメチル基の有無と立体配置が活性に関係していることを見いだした。2)エンドセリン変換酵素阻害物質TMC-66の最初の全合成を、連続する七環式構造の効率的かつ立体選択的な構築法を新規の銅酸化剤による閉環反応を見いだして完成し、絶対配置も決定した。3)制がん活性を示す(+)-BE-52440Aの全合成を、既に全合成したnanaomycin類の鍵中間体から立体選択的な酸化反応と付加反応を開発することにより達成すると共に絶対構造も決定した。また、構造-活性相関研究の結果、二量体に相当する架橋構造をもつとnanaomycin類には認められない制がん活性を示すが抗菌活性を示さないことを明らかにした。4)抗アレルギー物質(-)-TMC-264の全合成を、位置選択的ハロゲン化、保護、環化およびキノールの構築法を開発することにより達成すると共に絶対配置を決定した。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件)
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