研究概要 |
真核細胞において生命現象の中軸を担う血管新生、細胞死、細胞周期の素過程には未解明な部分が多く、これらを制御する新規天然有機化合物の探索・創製・応用研究の意義は大きい。本年度は、主としてこれまでに確立した評価系を利用して微生物代謝産物を探索源として探索研究を行うとともに、複数の生理活性小分子に関する詳細な作用機構解析、化学生物学的解析を行った。 ヒト血管内皮細胞(HUVECs)の増殖を選択的に抑制する新規化合物として、糸状菌Aspergillus fumigatus RK95-113が生産する新規化合物RK-95113を見出した。各種NMRスペクトルデータ、質量分析データ、物理化学的性質の詳細な解析の結果、RK-95113(分子量C_<24>H_<34>O_5)は、新規fumagillin系化合物であることを明らかにした。RK-95113は、fumagillinと比較して、側鎖部分にocta-2,4,6-trienoic acid ester構造を有する点が特徴的であった。RK-95113は、HUVECs細胞の増殖を顕著に抑制したが(IC50:0.1ng/ml)、ヒト肺繊維芽細胞WI-38に対する増殖抑制効果は弱かった(IC50:>100ng/ml)。さらに、RK-95113は血管内皮増殖因子(VEGF)が誘導するHUVECsの遊走を顕著に抑制することを明らかにした。今後、RK-95113の構造活性相関研究を行う予定である。
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