研究概要 |
固相での分子モーターニもとづくエネルギー変換系構築を目標に、アニリニウム誘導体とクラウンエーテルからなる分子ローターについて検討を行った。 アリールアンモニウムからなる分子ローター部分にダイポールを導入し、外部摂動による回転制御の足がかりとすることを目指し、o,m,p位を-NH2基または-F基で置換したアニリニウム誘導体を用いた[Ni(dmit)2]結晶を作製した。o-,m-,p-体いずれの場合もカチオン:アニオンが1:1の組成の新規錯体結晶を得ることができ、アリール基の分子回転について検討した。また電解法により部分酸化塩を得た。さらに、回転子としてアダマンタンを導入した系を作製し、アダマンタンの回転が低温まで保たれることを示した。 カチオンの回転に十分な空間を結晶内に確保するために、dibenzo[18]crown-6とm-置換体のモノプロトン体(HMPD+)(HMFA+)を組み合わせ[Ni(dmit)2]結晶を得た。これらの結晶では、アリール基のdisorderに対応して、アミノ基およびフルオロ基が2カ所に出現している。誘電率測定を行ったところ、350K付近に転移温度を持つ強誘電体であることが判明した。これによって、外部電場により回転制御可能であることが明らかとなった。 [Ni(dmit)2]以外のアニオンとして、嵩高いKegginクラスター[PMo12O40]4-を用い、p-phenylenediamine誘導体とクラウンエーテルからなる超分子カチオンを含む錯体結晶を作製し、空孔構造をもつ結晶を得た。現在強誘電性を示す結晶について検討を続けている。 以上より、電子活性な結晶内に回転の自由度を持つ超分子構造を導入すると共に、エネルギー変換デバイス構築に向けてのキーステップである、分子回転子の外部制御手法を確立することができた。また、強誘電体としての機能開拓を進めることができた。
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