研究概要 |
金電極にテルピリジンジスルフィド誘導体(tpy-AB-S)_2(1)を固定化し、適切な条件下で金属イオンの水溶液および二方向および三方向架橋ポリ(テルピリジン)配位子(tpy-L-tpy(2,3)およびL(tpy)_3(4))の溶液に交互に浸漬させることにより、金属錯体の一次元鎖状および分岐形樹状錯体オリゴマーが定量的に作製できることを、サイクリックボルタンメトリー(CV)、UV-VIS吸収スペクトル、STMおよびSEMなどの結果より明らかにした。例えば、まばらに金基板上に1を固定し、その上に3,4を組み合わせて作製した[1Fe3-3Fe4]のSTM像においては、分子サイズから見積もられる5nm×7nmと合致した均一な像が見られた。 上記のようにして作製した一次元および樹状錯体分子鎖からなる電極薄膜内の電子移動をクロノアンペロメトリーで解析した。従来の拡散型の電子移動ではなく、一次元分子鎖内のレドックス伝導として、電極と一層目の電子移動速度定数をk_1(S^<-1>)、錯体間の自己交換反応速度定数をk_2(mol cm^<-2>s^<-1>)として順次電子が鎖内をホッピングする子移動メカニズムで考えると、実験値をシミュレーションできることを示し、その電解質濃度依存性や電場効果についても明らかにした。その結果、電解質濃度が1Mと十分に高い場合には、[nFe3](n=2,4,6,8,and 10)においてk_1=220±20s^<-1>,k_2=1.4±0.3×10^<13>cm^2mol^<-1>、[nFe4](n=2,3,and4)においてk_1=260±10s^<-1>,k_2=4.7±0.3×10^<12>cm^2mol^<-1>s^<-1>と見積もられた。これは、レドックスポリマー被覆電極のレドックス伝導を、分子鎖内電子移動で解析した初めての例である。 そのほかに、Co-Ru錯体の界面配位合成、Fc-Aq共役錯体(1,4-F_<C2>Aq)のゲスト刺激による可逆的単結晶構造変換、記憶の深さを調節できるフォトクロミック錯体-フェロセニルスピロピランの合成と物性解析、電子コミュニケーションを光制御するビス(フェロセニルエチニル)エテンの合成と物性解析を行なった。
|