研究課題
本研究では、配位空間を反応場として活用することにより光応答性を示す有機分子と特異な磁気的性質を有する集積型金属錯体を組み合わせたヘテロ分子集合体の開発を行なった。□光応答性有機・無機複合錯体(SP)[Fe^<II>Fe^<III>(dto)_3]の開発:配位子場がスピンクロスオーバー領域にある(n-C_nH_<2n+1>)_4N[Fe^<II>Fe^<III>(dto)_3](dto=C_2O_2S_2)では、Fe(II)-Fe(III)間の電荷移とスピン配置が連動した特異な電荷移動相転移および電荷移動相互作用に起因する強磁性転移が起こること、これらの相転移は対イオンのサイズに著しく依存することを見出した。この結果は、固体状態で光異性化を起こすスピロピランを対イオンとして[Fe^<II>Fe^<III>(dto)_3]_∞の層間に導入することにより、スピロピランの異性化を媒介とした[Fe^<II>Fe^<III>(dto)_3]錯体の電荷移動相転移および強磁性の光亜制御が可能になりことを強く示唆している。この分子設計に基づき、光異性化分子であるスピロピランを対イオンとして導入した光応答性有機・無機複合錯体(SP)[Fe^<II>Fe^<III>(dto)_3](SP=spiropyran)を開発し、スピロピランの光異性化を媒介とする強磁性および電荷移動相転移の光制御に成功した。□光異性化分子をインターカレートした2次元強磁性体の開発とその光誘起磁性:層状磁性材料に有機分子をインターカレートした有機・無機複合錯体における磁性の光制御を研究目的として、ジアリールエテン誘導体を対イオンとした二次元強磁性材料であるLDHs(一般式:Co_2(OH)_3A・nH_2O(A=アニオン))の開発研究を行った。磁化率解析からCo-LDHs面内および面間相互作用のいずれも強磁性相互作用であること、また交流磁化率測定から9Kで強磁性転移を起こすことを明らかにした。この研究の成果として、固体中でジアリールエテンアニオンの光異性化が起きていること、またジアリールエテンアニオンの光異性化を媒介として、2次元強磁性体Co-LDHsの光制御を見出したことが挙げられる。即ち、ジアリールエテンアニオンが開環体の場合、強磁性転移温度が9Kであるのに対し、閉環体ではπ電子がアニオン分子全体に非局在化するため、アニオン分子のπ電子を媒介として2次元強磁性体から3次元強磁性体へと変化し転移温度が20Kに上昇することを見出した。また、この光異性化を媒介として保磁力および残留磁化が光により可逆的に制御できることを明らかにした。
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