研究課題
本研究では、配位空間を反応場として活用することにより光応答性を示す有機分子と特異な磁気的性質を有する集積型金属錯体を組み合わせたヘテロ分子集合体の開発を行なった。(1)光異性化分子を配位子とするスピンクロスオーバー錯体の開発:スピンクロスオーバー領域では配位子場の変化によって高スピン/低スピン状態を可逆的に実現することができるが、光による直接の電子励起を利用したLIESST(Light-lnduced Excited Spin State Trapping)現象は、その機構から室温付近でのスピンクロスオーバーを光によって誘起させることが困難である。このことから、光異性化部位を含む配位子を利用して、光照射により配位子場を操作し、光誘起スピン転移を試みた。金属配位部位として働くフェナントロリン部位を、光異性化部位であるスピロピラン骨格と組み合わせた配位子の合成に成功し、これを鉄(II)に配位させた錯体を得ることができた。磁化率の測定からはこの物質が全測定温度領域で高スピンであることが明らかとなったが、これは高圧下で測定することによりスピン転移が起こる可能性があり、透明窓を有するダイヤモンドアンビル型高圧発生装置により、光転移に誘起されるスピンクロスオーバー物質として有望な物質開発を行うことができた。(2)光異性化分子をインターカレートした二次元強磁性体の開発とその光誘起磁性:層状磁性材料に有機分子をインターカレートした有機・無機複合錯体における磁性の光制御を研究目的として、ジアリールエテン誘導体を対イオンとした二次元強磁性材料であるLDHs(一般式:Co_2(OH)_3A・nH_2O(A=アニオン))の開発研究を行った。この系では、前年度に報告した光異性化による保磁力および残留磁化の変化に加えて、前年度の報告でははっきりと見られなかった、交流磁化率における閉環状態の光異性化分子が開環状態に光異性化することに伴う磁化の増幅が観測された。この増幅は合成段階で開環分子を挿入した物質の磁気転移点に対応する温度に現れており、この光照射によって新たに誘起された強磁性転移が光異性化によるものであることを裏付けている。
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