研究概要 |
本研究では、金属中心の合目的配位空間と反応空間の構築により、特異な酸化能を有する酸素活性種を自在に創製し、その機能発現機構を分子レベルで解明することを目的としている。 配位空間制御による鉄(III)パーオキソ錯体の反応性制御:フェニル基を含む二核化配位子(L2)を用いた二核鉄(III)パーオキソ錯体の酸素親和性の制御と,生成したパーオキソ錯体によるフェニル基の水酸化に成功した。二核鉄(II)錯体([Fe_2(L2)(Ph_3CCO_2)]^<2+>)は-40℃,CH_2Cl_2中で安定なパーオキソ錯体([Fe_2(L2)(Ph_3CCO_2)(O_2)]^<2+>)を生成する。一方,この酸素錯体は室温では分解し,緑色の種を生成する。この緑色の種は結晶構造解析からフェニル基の一つが水酸化されていることが明らかとなった。配位子回収実験から水酸化の収率は90%以上でほぼ定量的であることがわかった。この反応は二核鉄酸化酵素であるToluene monoxoygenaseの良好なモデル反応であり,二核鉄(III)酸素錯体によるアレン水酸化の初めての例である。 (μ-η^2 ; η^2-peroxo)二核銅(II)錯体によるアレン水酸化とオレフィンのエポキシ化反応:(μ-η^2 ; η^2-peroxo)二核銅(II)錯体による外部基質との反応性の研究はほとんど無い。本研究ではキシリル基を架橋基として含む二核化配位子(HL)を用いた(μ-η^2 ; η^2-peroxo)二核銅(II)錯体が配位子に組込んだキシリル基を水酸化反応することを見出した。さらに,この錯体は外部基質であるスチレンのエポキシ化反応をもほぼ定量的に行うことを見出し,(μ-η^2 ; η^2-peroxo)二核銅(II)錯体によるオレフィンのエポキシ化反応にはじめて成功した。
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