研究概要 |
本研究では、金属中心の合目的配位空間と反応空間の構築により、特異な酸化能を有する酸素活性種を自在に創製し、その機能発現機構を分子レベルで解明することを目的とした。 キシリル架橋基を有する二核化配位子(R-L-H=1,3-Bis[bis(6-methyl-2-pyridyl-methyl)aminomethyl]-5-substituted-benzene)を含む銅(I)錯体([Cu_2(R-L-H)]^<2+>)は,低温で酸素分子と反応して(μ-η^2-η^2-peroxo)二核銅(II)錯体([Cu_2(O_2)(R-L-H)]^<2+>)を生成する。これら酸素錯体は反応性に富みキシリル基を水酸化する能力を持っている。水酸化反応に対する置換基RのHammett効果(ρ=-1.9)から,この水酸化反応は,親電子的芳香族置換反応により進行していることが明らかとなった。さらに[Cu_2(O_2)(H-L-H)]^<2+>はρ-置換スチレン(X=MeO, H, and Cl)をエポキシ化する能力をも持つことが分かった。このエポキシ化反応のρ値も-1.9であり,キシリル基の水酸化反応と類似の反応機構でエポキシ化が起こっていることが明らかとなった。また,[Cu_2(O_2)(H-L-H)]^<2+>はTHFを2-hydroxytetrahydrofuranへと水酸化し,d_8-THFを用いた水酸化反応では速度論的同位体効果が50という大きな値が観測された。以上のように本(μ-η^2-η^2-peroxo)二核銅(II)錯体は,アレン及びオレフィンへの親電子的反応ばかりではなく,脂肪族炭化水素の水酸化能をも持つことが明らかとなった(J.Am.Chem.Soc.in press)。
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